MATERIAL

天然素材の革

天然素材の皮は個体差が大きく、生きていた証である傷やシミ、病気の痕が残った皮など、様々な状態の物が原皮として流通しており、タンナーで幾多もの工程を繰り返すことにより、不均一な状態の原皮が革へと仕上げられています。

革について

【革の種類】

FIFTH WORKSでは様々な種類の革を使用していますが、主に牛革を中心に使用しています。

牛革でも年齢や品種、産地によりかなりの個体差があり、大きく下記の種類に分けられます。

・カーフ(生後6カ月ぐらいまでの子牛の皮。)

・キップ(生後6カ月から2年ぐらいまでの中牛の皮。)

・カウ(生後2年ぐらいの出産を経験した成牛の、雌牛の皮。)

・ステア(生後3~6カ月ごろに去勢され2年以上経た成牛の、雄牛の皮。)

原産国は様々で、国内産、北米産、バングラディシュ産のものを中心に使用しています。

 

【革のサイズ】

日本では革のサイズをds(デシ)で表示します。
1ds(デシ)=10cm×10cm

1dsのイラスト

革は基本的に半裁もしくは丸革という規格で販売されており、小さな革だと50ds位から大きなものだと300dsになる物もあります。

革の大きさイラスト

 

近年では小売店にてカット売り(A4サイズなどに切り分けた 革)も販売されていますが、半裁・丸革の価格からすると割高になります。

それは、布と違い革は部位により繊維の細かさが違うため使えない部分が多く、そういった部分は切り落としてしまいます。

また、傷があると避けて切り出す為、より使える部分が少なくなっていきます。

そうすると100dsの革でも実際使えるのは50~70dsぐらいしか使えない事も多く 、その分割高になってしまいます。

 

【傷の種類】

イバラや有刺鉄線による引っ掻き傷、ウジや寄生虫による組織の変質、個体管理をする為の焼印、血管の痕、シワ、鞣しの工程での人的な損傷など。

詳しくはATTENTIONのページをご確認ください。

革の傷について

 

【使用可能な範囲】

皮革は食用や乳牛種として育てられた動物の副産物です。

その為、牛舎や牧草地など様々な環境で育てられた個体が原皮として流通しており、傷や病気、皮膚の疾患など様々な状態の物があります。

一般的にベリー(お腹周り)は繊維が荒く、製品としての仕上がりに影響する為あまり使われることはありませんが、見えない部分や負荷がかからない部分に使用することはあります。

右下図はトートバッグを作る際に使用する型紙の例ですが、傷がない状態での配置ですので、傷が多い場合は使用可能部分が減ります。

また、型紙が大きいとその分、綺麗な広い面積を取ることは難しくなり、使用できる場所も限定されてきます。

 

革の歩留まり

【着色の種類】

 

<染料仕上げ(アリニン仕上げ)>

顔料を含まない染料を使用して革を染色する方法。

革に浸透し透明感のある塗膜である為、革本来の銀面の特長が生かされ、表情が豊かな革に仕上がります。

本来は傷のない高品質の生地に適用される方法で、上級品は高級皮革製品メーカーなどに流通しています。

近年人気の革なので取り扱うタンナーが増えていますが、上級品の革は少なく中級品の革を染色する為、 傷や汚れなどが多く、傷を避けて制作すると歩留まりは悪くなるので、傷を特徴として使用するメーカーも増えています。

塗膜の耐久性が耐水性がやや低く、日焼けによる色落ちや色移りするなど、取り扱いに注意が必要です。

 

<顔料仕上げ(カバリング仕上げ)>

有機・無機顔料を塗布して革を仕上げる方法。

塗膜が厚く、耐久性、耐水性が比較的高いので取り扱いしやすい。

低級革の銀面の傷や染色ムラを隠して均質な着色ができるので、製品革の等級を向上させることができる。

 

<セミアリニン仕上げ>

アニリン仕上げと顔料仕上げをミックスさせた方法で、少量の隠蔽力のある顔料を使うことで銀面の損傷を隠し、 染料で調色を行うことで、アリニン仕上げの様な風合いを出すことが出来る。

 

<芯通し>

鞣し作業を行いながら染色する際に、革の中(芯)まで染色することを芯通しと言います。

時間と大量の染料を必要とするのでコストアップしますが、革の切り口(断面)まで色が付いているので コバ磨きする際に着色する必要がありません。

 

【仕上げの種類】

 

<素仕上げ>

表面に加工を施さない、革本来の魅力を楽しめる仕上げ方法。

反面、素材の良し悪しが顕著に出るので、表面の傷やシワ汚れなどが目立ちやすいです。

 

<ガラス仕上げ>

クロムなめし革の表面をガラスやホーロー板に貼り付けて乾燥させ、表面をサンドペーパーで削って平らにし、塗料と合成樹脂で表皮膜をつくる仕上げ方法。

塗装する事により堅牢で汚れなどにも強くなる為、手入れが簡単になる事から学生靴やバッグなどに使われます。

 

<グレージング仕上げ>

棒状のガラス玉を使って革を磨き、摩擦熱を起こして艶や均一感を出す方法。

革の表面に平滑性と透明性のある光沢や艶を出すことが出来る。

 

<アイロン仕上げ>

加熱した金属板を革にプレスして艶を出す。

しっかりとした艶が出て、滑らかな銀面に仕上がる。

 

<エナメル仕上げ(パテント仕上げ)>

ポリウレタンの一種を塗装する仕上げで、高い光沢が得られる。

経年劣化でベタつきや剥がれてくる事がある。

 

<アンティーク仕上げ>

布などで表面に染料やロウ、ワックスを不規則に塗ったり磨いたりしてムラ感を出し、アンティーク調に仕上げる方法。

 

<プリント仕上げ>

さまざまな模様を革にプリントする仕上げ。

転写フィルムを貼りつける方法やプリントする方法もある。 傷が多い革でも隠すことができるので、低級革を使用することが多い。

 

<型押し>

爬虫類革の様な型や文字など、金属板に凹凸を彫りアイロン熱を使用してプレスする事で、模様の型をつけることが出来る。

革の表面の傷などを隠す際にも利用される。

 

<カゼイン仕上げ>

天然物系の仕上げ剤(カゼイン)や染料、ワックスを配合したものを塗布する方法。

傷が少ない上級革や、高級な革の銀面の良さを活かすための仕上げに使われる。

 

<バインダー仕上げ>

近年よく使用される仕上げ方法で、着色剤と合成樹脂などを接着させて仕上げる方法。

着色剤に顔料を使うことで、ムラになりにくく綺麗に仕上げる事が出来るが、革本来の見た目は失われる。

 

<ラッカー仕上げ>

ラッカーという塗料の一種で塗装する方法。

無色のものが一般的で、光沢感があり、耐水性や耐摩耗などが強くなるが、革の質感は損なわれる。

補足

食肉と同じように革にもランクがあります。

厳格な品質管理を行うタンナーさんは革の状態や傷の有無などを検品し A、B、C、D、Eランクなどに分けていきます。

Aランクの上級革はタンローや染色仕上げに使用され、 Eランクなどの低級革はエナメルや型押し革などに使用されます。

しかし、近年日本に上質な原皮が入りにくくなっているらしく、Aランクの革は大規模な製造を行うメーカーに提供され、小売では傷が多いものしか手に入らない状態で、10枚仕入れても傷が全くないものはない場合が多いです。

以前よく使っていた革のタンナーさんも質の良い原皮が手に入らないのが理由で、廃業をされました。

円高の影響で原皮価格も高騰し、染料や薬品などのコストも年々上昇している為、2年前に比べると1.2~1.3倍ほど革の値段は上がっています。

 

【レザーと本革の違い】

以外と知られていないのが、ファストファッションでよく目にする「レザー」という表記ですが、フェイクレザーも合成皮革、人工皮革も全て「レザー」と表記している場合があります。

上記の皮革は天然素材ではなく、布に石油系の合成剤を加えた人工素材ですので、根本的に違う素材です。

しかし、最近では再生レザーと呼ばれる「銀なし革」も増えています。

分厚い皮を漉いた際にできる床革を再度表面加工して、銀面があるように見せる加工。

見た目はスムースレザーのような仕上がりで、耐久性に乏しく負荷がかかると裂けてしまう可能性がありますが、価格が安い為安価な製品に本革として使われている場合もあります。

 

【FIFTH WORKSが使う素材】

天然素材の革は着色しただけだと色落ち色移りなどする為、様々な 薬品を使用して仕上げを行います。

FIFTH WORKSでは経年変化を楽しめるヌメ革やオイルレーザなど素仕上げの革を中心に使用しております。

使い込むほどにエイジングが楽しめる反面、傷付きやすく色落ちや色移りする可能性が高い素材ですが、それが革本来の良さだと思っております。

また、一部顔料仕上げの革を使用することもありますが、顔料仕上げの革は経年変化をしにくい傾向があります。

代わりに傷が付きにくく、色落ち、色移りもしにくくなり、扱いやすい製品になりますので、ご希望に沿った素材をご用意させていただきます。

 

 

 

※これらのデータは一部の技術を抜粋したもので、革を製造するには様々な工程を複合的に行います。

※これらのデータは日本皮革技術協会様、LIA日本皮革産業連合会様、その他取引先様からご提供いただいたデータを参考に製作していますが、主観的な部分も含めて記載しておりますので、実際とは異なる場合がございます。