「味」という表現

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以前、家具作家の方の記事を読んだ事があります。

 

「味」という表現について書かれていたのですが、食べ物の味ではなくて、物に対する「味」と呼ばれる表現について。

 

錆び付いた釘や、解体する家屋の古木。
使い古されてぼろぼろになった作業台。

 

年配の方や一世代上の方達からすると、「そんなゴミを使うなんて理解出来ない。ましてやそれを売るなんて…」
と言われるそうです。

 

数日前テレビで東洋文化研究家のアレックス・カーさんが、古い茅葺き屋根の家を再生し宿泊施設として再利用する活動が紹介されていました。

 

アレックス・カー氏曰く、
「日本人は自国の伝統文化に秘められた“美”に無自覚であることが“もったいない”」と

 

安い建材、壊れない家にどんどん立て替えていき、古い家は壊して廃材は消却する。
素晴らしい古木や銘木も一緒に破壊して捨ててしまう。

 

昔の日本人はそういった古くても良い物は大切に代々継いでいく文化があったはずだと。

 

元来、日本人はそういった物の価値に対してとても敏感で大切にしていたんだと思います。

 

僕も中学生の頃、ぼろぼろのスタジャンを古着屋で買って来たら、親が怒って古着屋に交換しに連れて行かれた事がありましたw

 

大量消費のど真ん中で育って来た僕達の世代は、洋服でも色が移らない、落ちない、破れないのが当たり前。
店頭に並んでいる物はすべてクオリティーは均一なのが当たり前で、傷があったりほつれてたりすると不良品と言う感覚があります。

 

しかし逆に言うと、デニムは70年代には色落ちしない縮まない物が人気があったのに、今となっては色落ちするのが良い。
縫いたてのデニムをわざと破って色落ちさせる技術が普及しています。

 

思い起こせば、昔は他の人と被るのが嫌で古着などの一点物と言われる物に傾倒して集めていましたが、今となってはその古着にしか出せない、当時の生産背景や空気感を味わう事が楽しく感じます。

 

当時は大量生産された物でも、誰かが大切に使用し月日を重ねる事で重厚な「味」がある物に変化する事は多々あると思います。

 

物が溢れている僕達の世代は、便利で快適な物と古くても価値のある物両方に触れる機会に恵まれています。

 

ファストファッションと呼ばれる物でも、値段が安いからと言って、粗悪な物を作ってる訳ではないと思います。
安い人件費で安価な材料を使って大量生産をする事で、値段に落としこむのが一般的でしょう。

 

でもその裏では、生地を生産するメーカー、生地卸屋さん、縫子さん、販売員など数えきれない数の人の手を通して一つの物が出来上がっています。

 

安いから、簡単に捨てていいという物ではなくて、物には価値がある。
断捨離という言葉がありますが、僕は十年以上前に$1.99で買った古着のTシャツを今は着ないとしても、捨てることができないですw
その時、買った思いを思い出して懐かしんでしまうのです。

 

販売業をしている人間としては、そういった様々な思いや人たちの手が加わって物が出来上がっている事を忘れずに、提供出来ればなと思っています。

 

話が大分それましたが、「味」についてですねw

 

「味」という曖昧な表現は、かなり個人の好みが映し出されると思います。

「味」=「温かみ」

 

に近い感覚なのかな?
人の手の温もりというか、手間というか。

 

手間=「そのことをするのに費やされる時間や労力。」と辞書にあります。

 

時間を掛けて作られて物には重みがあるという言葉を良く耳にしますよね。

価値観は個人それぞれ違います。

 

どんなに時間をかけて作られた良いものだとしても高すぎると思う人もいれば、それだけ手間がかかってるのであれば納得して購入される場合も。

 

手間がかかってるから「味」があって良い物だとは限らないでしょう。

 

千年以上前、染色の技術が発達していない頃は、何度も何度も木の実や花を煮たり、すり潰したりして膨大な時間を掛けて一枚の布を染めていました。
また、色に対しての美意識も高く、染めにくい色=高価な色とされていた時期もあるそうです。

 

それに比べると現在は手軽に染めることができる化学染料が開発され、簡単に染めることができますが、それでも染めるにはそれなりの手間がかかります。

 

革染料 レザーダイイング
そんな、手間がかかっても自分が感じる「味」のある物を作っていきたいな〜と…

 

僕が作った物が誰かの手に渡り、もう使わないけど、なんか捨てれないなと思ってもらえる様に。

 

なんかまとまりが無くてすんません…
そんな物が作ればなと思います。

 

革染料 レザーダイイング スピラン

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