オイルレザーに接着剤が付かない件を色々と実験してみました。

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先日納品させて頂いた商品に不具合があったので、原因を調べてみました。

 

まず、お客様、この度はご迷惑をおかけして誠に申し訳ございません。

再度制作するにあたり、再発がないように万全を確認してから取り掛からせていただきます。

 

<症状>

一週間ほど使用したら、コバ面からノリがはみ出してきて黒い塊ができ、ベタベタと手に引っ付いてしまう。

 

<使用レザー>

タンニンなめし タンロー1.0mm厚、1.6mm厚

ニートフットオイルをスポンジに浸透させて、3~4回手摺りで浸透させた。

 

<使用オイル>

ニートフットオイル

 

<使用ボンド>

ブルドック印 ゴムのり

 

<事前テスト>

紙にゴムのりを塗り、完全に硬化した後、ニートフットオイルを垂らすと、ベタつきがでて軟化する事を確認。

 

まずは、ニートフットオイルの薬品屋さんに確認

成分:牛脚油100%

特徴:牛の蹄骨の油を高度に生成した油

 

僕は鉱物油が混ざっているから、石油でとけてしまっているのかな?と思ったのですが、間違いなく牛脚油100%との事。

動物性のオイルは革の繊維に浸透した後も安定性が悪いらしく、時間が経って徐々に奥まで浸透していくそうです。

浸透がいいのは良い事なんですがね!!

染色した時とか、革が硬くなったらニートフットオイル塗ると全然質感変わりますよ。

 

 

次にゴムのりのメーカーに確認。

回答:ゴムのりとオイルの相性が悪いので、シンナーでオイルをしっかりと拭き取った後、やすりがけしてゴムのりを塗るように言われました。

下の画像が、オイルレザーにゴムのりを塗ってから貼り合わせ、にゅるにゅると動くので数回革をねじってわざとゴムの塊を作りました。

 

1日してから剥がした物(左)

にゅるにゅるになったゴムのりとゴムの塊をシンナーで除去した物(右)

 

表面のゴムのりはシンナーで綺麗に除去可能で、ベタつきも除去できます。

ただ、浸透しているオイルを完全に除去する事は出来ませんでした。

 

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次に後輩くんがギター制作に使用する膠を教えてくれました。

 

この膠、つぶ膠と言うそうなんですが、凄いポテンシャルですよ!

画材屋さんとかに売ってるそうです。

Amazonでも売ってます。

 

オイルレザーでもカチカチに固めれます。

ただ…手間がかかる。

<長所>

ベタベタにオイルを浸透させた革でも、しっかりと接着可能。

 

<短所>

・ぬるま湯に膠を入れ湯煎しながら溶かす。

・密閉容器に入れていても数時間でゼリー化する。←ドライヤーなどで再加熱してあげれば、再利用可能。

・カビが生える

・実用強度に達するまで30~120分かかる(オイルが多いところは、油膜が乾燥の邪魔をするのかなかなか乾燥しません)

・約60度以上で軟化する。(接着したところをドライヤーで2分ほど温めただけで、硬化していた接着面がゆるくなります。)

 

ふのりを使った事がある方は、同じような感じだと思っていただければ。

 

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靴修理のプロが使っているのは、ノーテープの9820とP-51

 

9820はグラフト系で速乾性と固めに固まるのが特徴

ただ、オープンタイムがシビアでなかなか癖がありますね。。

ぼーっとして時間を間違えると全然付かないです。

 

P-51はオイルレザー用のプライマー

メーカーの推奨乾燥時間は室温で10~20分とありますが、本職の方が半日ぐらい置いた方が良いよと教えてくれました。

 

確かにしっかりとつくのですが、仕立てる場合に接着するのに1日かかるのは作業効率が悪い…

 

 

ホーウィン社のクロームエクセルとか、人気のオイルコードバンの接着不良は多いらしいです。

あんなけオイルが入ってたらそら剥がれそうですよね。

どうやって仕立ててるんかな??ご存知の方いらっしゃったらご連絡お待ちしてます!

 

img_7511

 

そして最後にG17でおなじみのコニシ様

 

電話で状況を相談したところ、「ゴムのりがオイルで分解されてしもうとるんですわぁ〜」と教えてくれました。

 

ネットで調べたらG103が耐油性があるって書いてたんですが、オイルレザーにも使えますか?と聞いたところ、

「オイルに強いニトリルゴム系の接着剤なんで、うちの商品の中では一番オイルには強いですよ。ただうちでもそこまでの実験データがないので、オイルレザーを接着できるかはなんとも…。」

との事。

 

一縷の希望を抱きながら近所のホームセンターに買いに。

早速実験。

 

オイルをたっぷり塗ったヌメ革を40番手のヤスリで5mm幅ほどガッツリと荒らし、G103を薄塗り。

5分ほど乾燥させてから、貼り合わせて圧着。

 

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ガッチリと食いついてます。

まったく剥がれない訳ではないですが、十分な接着です。

割って曲げても、剥がれません。

もちろん、にゅるっともしませんしベタつきも有りません。

 

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念のため、事前テストと同じように、

紙にゴムのりを塗り、完全に硬化した後、ニートフットオイルを垂らしましたが、ほとんど質感は変わらず。

これなら、速乾性もあり、通常の接着作業と変わらないので、十分使えそうです。

 

革の硬化などもなく、ひび割れたりはないと思いますが、しばらく様子を見て、本番に使用してみたいと思います。

 

僕は使った事がないのですが、オーダーRさんがオイルレザー用の接着剤を販売されていますね。

常盤化学工業(株) バンダー

よかったらご参考まで。

 

こちらの実験はあくまで自分の感覚の範囲内ですので、すべての革に使える訳ではないと思いますが、少しでもヒントになれば幸いです。

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