革の染色について

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誠和から発売されているバチック(水溶性染料)を使って染色をする際に気になる事があったのでラボに聞いてみました。

 

床面を染色する場合、直接染色してしまうと毛細管現象により床面の方が染料を多く吸い込むのと、繊維に引っかかり塗りにくい為、トコノールにバチックを混ぜて塗ってみると、とても塗りやすくなりました。

 

このやり方の問題は無いか教えてもらったのですが、バチックには革の繊維と化学反応を起こして定着する効果があるらしく、トコノールに混ぜてしまうとトコノールには数十種類の薬品が含まれている為、結合しにくくなってしまう可能性があるそうです。

また、染料の周りにトコノールが付着した状態で繊維に浸透するので、水に濡れた際にトコノールが緩むと染料が溶け出してしまう可能性があるようです。

 

そこで、ラボから裏技を教えていただきました。

ある物を使ってトコ面を処理してから染色すると、滑りも良くなり染料の浸透を妨げない効果があります。

ヒントは天然素材の物で、レザークラフトの参考書を読んでいると職人さんは使われています。

<写真>左:床処理せず染色 真中:床処理剤塗布後染色 右:床処理剤塗布後プレスし染色

あと、染色をムラなくする方法をお問い合わせいただきます。

染色は難しいですよね。

失敗例をやってみました。

<検証方法>

使用皮革:牛タンロー2mm厚

使用薬品:ネオパールN(非イオン系界面活性剤)ムラになりにくくする為に使用します。

使用染料:バチック

 

まず、ネオパールNを数滴入れた水をギン面に吹きかけ湿らせます。

ウエスを折り曲げてタンポを作り染料を擦り込みながら捺染します。

今回はグラデーションになるよう外側を濃い目に徐々に内側に薄くする方法をやってみました。

湿らせた状態で染色後乾燥させます。

乾いたらもう一度捺染します。

希望の色になるまでこれを繰り返します。

 

<結果>

傷があるとその部分の繊維が変質してしまい染料の浸透が変わってしまいます。

タンローの状態だと酷い傷はわかりますが、薄い傷や擦り傷などは染色してから浮き出てくる事が良くあります。

グラデーションにする為には染料の濃度を徐々に変えながら染色する必要があり、原液で染色してもあまり綺麗なグラデーションにはなりませんでした。

 

<まとめ>

まず素材の傷や状態を見極めるのが一番の難しい点です。

ランクの低い革は傷が多い事が多く、染色には向いていない事があります。

タンナーさんではそういった革は型押しにしたり、顔料で仕上げたりして使い分けているので、染料仕上げにする為には良い革を使うのが条件となります。

濃度を薄めた染料で下地を作り、濃度を徐々に上げていく方がムラになりにくいです。

刷毛、またはタンポに染料をしっかりと含ませ、染料を刷り込んだ方がバチックは良く染まります。

けちって薄くすると刷毛ムラやムラになりやすいです。

左からバチック、ネオパールN、ネオパールを数滴入れた水、ニートフットオイル

染色すると革が硬くなるので、必ず保革してあげましょう。

ラボがお勧めするのはピュアホースオイルです。

 

ニートフットオイルよりも浸透が良い為、革の芯まで栄養が行き渡ります。

ただ、僕は重厚なオイル感が好きなのでニートフットオイルと使い分けてます。

最後に床面に塗布した床処理剤の耐水性について疑問があったので、半分レザーフィックスを塗布して水洗いしてみました。

通常軽く濡れる程度なら、緩んで染料が溶け出すような事は無かったですね。

ただ、色移りはしてしまうのでお気をつけください。

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